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院長コラム

Column

第5回「『ブレスト・アウェアネス』と乳房自己触診のススメ」


令和2年度も残すところ、あとわずか。令和3年度がいよいよ来月からスタートしますね。次年度も、皆様に健康と安心を届けるクリニックを目指して歩んでいきたいと思っています。

これから、新しい職場等で検診を受けられる方も多いかと思います。

乳がん検診がセットにあるから安心されていらしゃる方も多いと思いますが、乳がんの早期発見は検診を受けることも、もちろん重要ですが、日頃から自分の乳房の状態に関心を持つことが大切です。

「ブレスト・アウェアネス」

女性自身が、ご自分の乳房の状態に日ごろから関心をもち、乳房を意識して生活することを「ブレスト・アウェアネス」といいます。「ブレスト・アウェアネス」は英語で「Breast awareness」と表現します。これは、1990年代からイギリスで提唱され始めた概念です。直訳すると「乳房(胸)を意識したり気付いたりすること」という意味です。

ブレスト・アウェアネスは乳がんの早期発見・早期診断・早期治療につながります。女性にとって、ご自身の身を守るためにとても重要な生活習慣といえます。

そこで、「ブレスト・アウェアネス」を身に着けるためには以下の4つの項目を実行しましょう。

  • ① 自分の乳房の状態を知るために、日頃から自分の乳房を見て、触って、感じること(乳房のセルフチェック)
  • ② どのような乳房の変化に気をつけなけばならないかを知っておくこと
    例:しこりや血性の乳頭分泌、乳房の左右差、乳頭の変化など
  • ③ 乳房に変化やいつもと違う感覚を自覚したら、すぐに医療機関へ行くこと
  • ④ 40歳になったら定期的に乳がん検診を受診すること

これらは乳がんの早期発見・診断・治療につながる、女性にとって非常に重要な生活習慣です。

セルフチェックを行う時期

【閉経前の方】
月経終了後から一週間、乳房のはりや痛みがなく、乳房のやわらかい時に行なうのが良いでしょう。
【閉経後の方】
毎月1回チェックする日を決めて行ないます。

自己検診でチェックするべきこと

「目で見て確かめるポイント」

正面から腕を下した状態や、バンザイした状態で見てみましょう。

チェックポイント

<乳房>

  • 左右の大きさに変化や形の変化
  • 皮膚の引きつれ
  • 皮膚の盛り上がりや窪み
  • 皮膚が赤くなっていないか?

<乳頭>

  • 乳頭の凹み(陥没)、変形、ひきつれ
  • 赤み・腫れ・ただれ
  • 分泌物(乳頭をつまんだり、軽くしぼりだすようにして、血のような乳汁や、変色した乳汁が出ないかみてください)

乳房を触ってみる

調べる乳房側の腕を上げて、反対側の手指をそろえ、指の腹で軽く押すように全体をまんべんなく触わってください。(入浴時など、指が濡れているとわかりやすいです。石鹸が付いた指などで触るもの良いでしょう)
指を動かす方向を模式図を以下に示しておきます。

乳頭を中心に指を上下方向 内外方向に動かしてみる
①乳頭を中心に指を
上下方向内外方向に
動かしてみる
指を上から下に動かしてみる
②指を上から下に
動かしてみる
指を乳頭から渦巻き状に動かしてみる
③指を乳頭から
渦巻き状に動かしてみる

仰向けになって行う方法もあります

①調べる乳房側の肩の下に、枕やバスタオルを折りたたんでおいてください。
②調べる乳房側の腕は、頭の後ろにおき、反対側の手指をそろえ、指の腹で軽く押すように全体をまんべんなく丁寧に触わってください。

全体をまんべんなく軽く触り、次に少し深めに助骨にさわるぐらいまで触ってみましょう。

しこりを見つけたら、大きさや硬さはどうか、よく動くしこりかどうか、痛みが伴うかなどを確認しましょう。しこりを感じなくてもなんとなく硬さが違うとか、痛い場所があるなども注意しておきましょう。

また、乳がんの場合には脇(腋窩)のリンパ節に転移することもあります。両脇の自己触診も合わせておこないましょう。
※当院の受付にも「乳房の自己触診」のパンフレットを置いてありますので、興味がある方はお持ち帰りいただけます。

2020年度はコロナ禍の影響で、がん検診の受診率が大きく低下しておりました。乳がんの発症頻度には変化がないので、乳がんの早期発見率が低下し、乳がんが進行してから診断される方が増えることが危惧されています。
乳がんは早期に発見し治療をすれば、予後がとても良いので、早期発見・早期治療でその後の人生を幸せに過ごすことができます。

セルフチェックさえしていれば検診を受けなくてよいというものでもありません。日頃から自分の乳房に関心をもち、40歳以降では乳房に変化がなくても乳がんの早期発見のために定期的な検診を受けることが大切です。
特に、乳がん検診で精密検査の必要がないと判定された場合でも、しこりや血性の乳頭分泌などの自覚症状がある場合は、放置せずに速やかに医療機関を受診することが極めて重要です。

当院では、乳がん検診にも力を入れております。画像検査の結果も当日ご説明するようにしております。
年に一度は、健康な人生を送るために乳がんの定期検診を受けることをおすすめいたします。

山上 良院長
記事監修
院長 山上 良

大阪市立大学医学部卒業。
日本外科学会専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、乳がん検診マンモグラフィ読影認定医、乳がん検診超音波検査実施・判定医、日本癌治療認定医機構癌治療認定医。

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