院長コラム
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前回のコラムで、マンモグラフィの有用性をお話ししました。
乳がん検診と乳腺超音波検査(エコー検査)に関してもお話をいたします。
【マンモグラフィが自治体などの検診(対策型検診)で使用される理由】
乳がん検診に主に使われる検査には、マンモグラフィと乳腺超音波検査の2種類があります。どちらも長所と短所がありますが、横浜市乳がん検診など自治体などの対策型検診で実施されるのは、乳がん死亡率の減少が文献的に証明されているマンモグラフィが使用されます。
マンモグラフィは他の施設間でも、過去画像との比較が容易であるという点と、精度管理を全国共通にできるという利点もあるからです。
マンモグラフィでは腫瘤(しこり)を形成せずに、石灰化を生じる早期の乳がんを発見することは優れています。
しかしながら、若い方や乳腺濃度の高い方(高濃度乳腺・デンスブレストともいいます)では、乳腺が白っぽくなるために、乳がんの発見率が下がるデメリットがあります。また、妊娠中・授乳中の方には不向きな検査です。
マンモグラフィで検出できずに、超音波検査で検出される乳がんも、約30%ぐらい存在するとされています。
【乳腺超音波検査】
乳腺の超音波検査では、乳腺濃度の高い方ではマンモグラフィより腫瘤の検出率が高いですが、石灰化像を捉えるのはかなり困難です。石灰化を探すには不向きな検査といえます。
超音波検査は、被ばくの心配がないので妊娠中・授乳中の方でも安心して受けてもらえるメリットがあります。
ただし、乳腺超音波検診による乳がん死亡率の低下はまだ証明されていません。
精度管理が難しいので、施設により精度の差が出る可能性もあります。
乳腺超音波検査で検出されず、マンモグラフィで検出される乳がんは約20%ぐらい存在します。
★マンモグラフィ・超音波検査ともメリット・デメリットがありますし、どちらか一方が極端に有効というわけではないので、2種類の検査を 一緒に受けるほうがより安心できると考えます。
【30代の女性の乳がん検診どうするか?】
近年乳がんに罹患する日本人女性は増加しており、一生の間に9人に1人は罹患する
可能性があるといわれています。
30代女性の乳がん罹患率の統計的な調査では、30~34歳女性では、人口10万人あたり25.7人、35~39歳では51.6人、罹患のピーク時は45~49歳と60~64歳で170人とされています。
子宮頸がんの罹患率が人口10万人あたり、30~34歳で18.1人、35~39歳で26.7人、子宮頸がんのピークが26.7人ですから、乳がん罹患率の高さがうかがえます。
30代の方の乳がんはピーク時の3分の1弱ですが、9人に1人が乳がんになる可能性がある状況を考えると決して低い数値とは言えません。
ちょうど、子育てやお仕事に忙しい時期かと思いますが、検診は重要と考えます。
授乳期や妊娠期の方も多い年代ですので、エコー検診だけでも受けられるほうがいいかと考えます。
母親または祖母など、血縁者に乳がんの患者さんがおられる場合は、30代からでも検診を
受けられることをお勧めします。
症状がある方は、どんな些細な症状でも、放置せずに早めに通常の診察(保険診療)を受けましょう。
当院ではエコーのみの乳がん検診(自費)も実施しております。
当日の予約も可能で結果も当日にお伝えいたしますので、お気軽に受診下さい。
大阪市立大学医学部卒業。
日本外科学会専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、乳がん検診マンモグラフィ読影認定医、乳がん検診超音波検査実施・判定医、日本癌治療認定医機構癌治療認定医。